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安部公房さんの「人間そっくり」です。
「人間そっくり」の初版は、昭和42年の早川書房「日本SFシリーズ」の一冊として出版されたものだそうだ。


〈カバー裏表紙より〉
《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところに、火星人と自称する男がやってくる。はたしてたんなる気違いなのか、それとも火星人そっくりの人間か、あるいは人間そっくりの火星人なのか?火星の土地を斡旋したり、男をモデルにした小説を書けとすすめたり、変転する男の弁舌にふりまわされ、脚本家はしだいに自分が何かわからなくなっていく・・・。異色のSF長編。


大部分がアパートの一室での、脚本家の主人公と、「ぼく、火星人なんですよ」と自称する男との会話で成り立っている。
自称火星人の男の饒舌さは見事なもので、巧みに話を二転三転させながら、科学的、数学的な知識を織り交ぜたり、論理を振り回したりして、主人公をアリ地獄のように迷宮の世界に引きずり込んでがんじがらめにしていく。

それは、主人公だけにではない。読者である私自身も翻弄され、混乱してきている自分を自覚しつつも、読むのをやめられないでいる。

ここでも、安部作品の中核をなしている「人間の不安の感情」が主人公を取り巻いて離さない。図々しい自称火星人の男は、隙を見せるたびにズンズンと心の中に踏み込んでくる。不安の気持ちをいろんな角度からつつき回されて、広げられて、ひっくり返されて、自分の存在自体があやふやで心もとないものへと変わっていく。

とても奇妙な小説である。
読んでいてなんとなく落ち着かない。
読者自身をも不安定な状態においておくところが、この小説の面白さだ。
また、多くの部分で、会話とト書きのような構成をとっており、小説というより、舞台を見ているような臨場感がある。

現実と非現実、正気と狂気の境界が次第にあいまいになり、いつのまにか逆転していく過程を体感させながら、論理的な思考実験を小説の世界で実現している希有な作品である。

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2012.04.14 | 安部公房 | トラックバック:(0) | コメント:(0) |












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