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安部公房さんの「カーブの向こう・ユープケッチャ」です。
書かれた時期もまちまちで、長編の原型となっている作品をいくつか含む短編集である。

カーブの向う・ユープケッチャ カーブの向う・ユープケッチャ (新潮文庫)
《文庫カバー裏表紙より》
突如記憶が中断してしまい、謎に満ちた世界を手探りで行動する男。現代人の孤独と不安を抉り出し、「燃えつきた地図」の原型となった「カーブの向こう」。自分の糞を主食にし、極端に閉じた生態系を持つ奇妙な昆虫・ユープケッチャから始まる寓意に満ちた物語、「方舟さくら丸」の原型となった「ユープケッチャ」。ほかに「砂の女」の原型「チチンデラ ヤパナ」など、知的刺激に満ちた全9篇。


昭和30年に発表された短編「ごろつき」は、これは安部さんの作品なのだろうかと思うほど、ストレートな内容。立場の逆転という要素はあるものの、正直、安部作品では珍しく、これと言って感じるものはなかった。

面白かったのは、「月に飛んだノミの話」。衛生害虫協議会なるものに居合わせた男が語る、ノミとかシラミとか南京虫たちのなかなかに知性溢れる会議のお話である。寓意の富んだ鋭さにユーモアを交えて、楽しませてくれる。

「完全映画(トータル・スコープ)」も面白い。安部さんのSF的な空想の世界を堪能できる。さらに、2部構成的になっており、現実の光景として見えていたものを反転させるトリックも仕掛けられていて、この中では最も娯楽的な作品である。

「チチンデラ ヤパナ」は長編『砂の女』の原型である。設定も内容もかなり近いが、途中でぷっつり終わっている感じだ。ここから、あの名作へと続いていったかと思うと感慨深いが、続きを見たくなる気持ちがわかる気がする。自分が担当編集者だったら、続きを書いてくれと懇願しただろう。

「カーブの向こう」は長編『燃えつきた地図』の冒頭とラストの文章の原型であり、文章自体がかなり同じものだが、作品として主人公の設定が違っていて、この作品の時点ではあくまでも記憶喪失的な内容に終始していたというのが、逆に面白い。

「ユープケッチャ」は『方舟さくら丸』の発端の部分の原型とみなされているが、内容はかなり違う。だがこの時点で、ユープケッチャという閉鎖生態系の昆虫が登場していて、強い印象を残している。

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2012.03.10 | 安部公房 | トラックバック:(0) | コメント:(0) |












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