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安部公房さんの「無関係な死・時の崖」です。


《あらすじ/文庫本裏表紙より》
自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく『無関係な死』、試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化した『時の崖』、ほかに『誘惑者』『使者』『透視図法』『なわ』『人魚伝』など。常に前衛的主題と取り組み、未知の小説世界を構築せんとする著者が、長編「砂の女」「他人の顔」と並行して書き上げた野心作10編を収録する。

昭和30年代に書かれた短編集。
どの作品も発想、展開、表現ともに秀逸で惹きつけられ、現実から少し切り離された独特の世界に連れて行かれたような感覚がたまらない。

なかでも「人魚伝」は素晴らしい傑作だった。
主人公は、沈没船で閉じこめられた人魚を発見する。全身が緑色の異形の姿、しなやかで華奢な身体、整った顔立ちと無邪気な美しい瞳に魅せられてしまう。そして自室で人魚を飼育しようと思いつくのだが‥‥‥。
その人魚の生々しさ、生物としての重量感やぬめり感みたいなものが伝わってくる一方で、自室に人魚を運ぼうとする準備や主人公の行動、心理状態などは、実に細部にこだわった独特の描写がなされていて、その対比が非日常と日常がねじり込まれて重なり合いながら紡がれていき、不思議な違和感を生み出している。
人魚との愛の営みや食事の描写などは、読んでいてぞわぞわしてくる気味の悪ささえ感じるが、物語は大胆な構図の転換をみせて、とんでもない方向へと展開するのだ。

「人魚伝」に限らず、どの短編も人間の内側で起こる不安な気持ちと揺れ具合、心の葛藤が実に論理的に緻密に描かれていて、人間の滑稽さが滲み出てくる。

物語が醸し出す閉塞感、不気味さ、気味の悪さ、不思議さ、不安定感、不条理観、そういうものがなぜかすべて魅惑的で美しいと感じてしまう。そういう力をどの短編もが持ち合わせている。

安部さんの作品を読み出すと、この得体の知れない、掴み取れない感触の快感に取り憑かれてしまうのだ。妄想かもしれないが、安部作品が読みたいと脳が疼く感じがしてならない。

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2012.03.23 | 安部公房 | トラックバック:(0) | コメント:(0) |












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