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大河内直彦さんの「『地球のからくり』に挑む」です。
理系の読み物だが、工学や物理学のみならず、文化人類学や文学までをも紐解き、さまざまな知識が交錯していて知的刺激に富んでいる。

まず、「地球の定員」という興味を引かれるタイトルで第1章がはじまる。
私たち人類は、ひどいエネルギー中毒に罹っているとする。
私たちが一日に口にする食物はおよそ一万キロジュール(2400キロカロリー)だが、その30倍の30万キロジュールをゆうに超えるエネルギーを毎日消費しているのだ。

動物の生きるエネルギーの根源は、植物の光合成、すなわち太陽エネルギーに行き着く。植物が固定した太陽エネルギーは1年で300京キロジュール。そのうちの10%の30京キロジュール分の植物を草食動物が食べ、肉食動物はさらに10%の3京キロジュール分の草食動物を食べる。
太陽エネルギーの総量が決まっている限り、こうして地球上に暮らすことのできる生き物の「定員」は決まってくる。

膨大な種類の生き物が地球上にいる中で、人間という一種だけでそのうち2京キロジュールのエネルギー量を食べており、明らかに私たちは生態系のバランスを崩していると言える。

一万年ほど前、人類は、自然とのつながりだけに頼った太陽エネルギーの利用法から手を切り、人類だけが自然界のルールに縛られずに抜け駆けできる「からくり」を生み出した。それが「農耕」である。

農耕によって人類は地球環境に悪影響を与えるほどに大幅に個体数を増やしたのである。そしてそれを支えたのは「窒素肥料」であり、もし「ハーバー・ボッシュ法」の発明がなければ、窒素肥料を作ることができず、現在の世界人口は30億人ほど少なかったと考えられるのだといい、この発明が与えた影響の大きさがずいぶんと強調されている。

この他、石油、石炭、天然ガスといった化石燃料を中心に、理系・文系の知識を総動員して、化石燃料と文明との関係、その歴史と成り立ち、さまざまな背景や地球システムにおけるかかわりなどを解説しており、たいへんに興味深い。

石油の起源である太古の赤潮現象について。
世界中の海底に大量のヘドロが溜まった「海洋無酸素事変」は、一億年前、ヘドロが百万年もの間、海底に降り積もったもの(現在の黒色頁岩)で、このヘドロを作りだしたのは赤潮の原因「シアノバクテリア」である。この一部のヘドロが現在までの一億年の間に地熱で熟成され、石油への変質したのだという。

太古の昔にシアノバクテリアが数百年にわたって大繁殖し、一億年に渡って貯め続けた太陽エネルギーの恩恵にあずかって現代人は暮らしているのだ。そのバクテリアを形づくる炭素は、地球の内部に閉じこめられていた宇宙のかけらなのだそうだ。

地球には、いくつかのからくりがあるという。

例えば、植物の光合成を起点とする炭素サイクルは、二酸化炭素と有機物の間を行ったり来たりして、差し引きすると何も消費しないようになっている。それは、目に見えない微生物が、光合成によって生み出される有機物と酸素を分解し続け、二酸化炭素と水に戻していくからで、見事にバランスを保っている。

また、炭素サイクルは一年で一回転するのであるが、一回転につき0.4%が脱落して炭素は徐々に枯渇していくのだそうである。しかし、サイクルから抜け落ちていった炭素を補充するからくりがある。それは火山活動であり、火山から噴出するガスに二酸化炭素が含まれていて、大気中へと放出される量が、炭素サイクルから抜け落ちる二酸化炭素量とぴったりと一致するのだそうだ。実に巧くできている。

そこに、人類の叡智に基づくイタズラが入ってくる。

炭素サイクルには2つある。一年に一回転する「生物サイクル」と、数億年に一回転する「地球サイクル」が共存しているのだ。この二つのサイクルが地球のからくり(火山活動など)によって見事にバランスしている。

化石燃料は、すべて地球サイクル側に含まれる物質であり、人類はそれらを無理矢理に生物サイクルに引っ張り込んでいるのだという。おかげで生物サイクルを巡る炭素の総量が年々増加し、その結果として大気中の二酸化炭素が増え、酸素が減っているのだという。

人類は化石エネルギーを得るために、自然の営みの一部を速回ししているというイメージだ。地球の何億年にもわたる自然の営みを攪乱しているのである。

ちなみに、人類が化石燃料を燃やしてエネルギーを得ることで、大気中の酸素濃度が毎年0.0003%減少しているのだそうだ。このまま減少すると一万五千年後には人類は絶滅するという。

最後に大河内直彦さんは言っている。

「二十世紀以降、化石エネルギーは人類の活動における主力エンジンにまで成長した。それどころか、いつの間にか主客が逆転して、人類の行動までをもコントロールするようになってしまった。‥‥‥禁断の果実を口にした人類の欲望は、もはや後戻りができないところに来てしまった。」と。

そして「エネルギーに支えられた豊かな暮らしは、皮肉なことに、現代社会を成り立たせているからくりや、リスクを忘れがちにさせてしまうようだ。‥‥‥それどころか、人間の精神構造まで幼稚にしてしまう作用もあるのではないか。」と警鐘を鳴らしている。

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2012.07.09 | 大河内直彦 | トラックバック:(0) | コメント:(2) |

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