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山本幸久さんの「シングルベル」です。
婚活モノと言っていいんだと思うが、切り口は独特である。


《文庫本裏表紙より》
恋の気配すらない息子・陽一に業を煮やし、親同士のお見合いセミナーに参加した父・恵。3人の女性たちとの“出会い”を演出するも…。次々と飲み友化していく彼らは果たして結婚までたどりつくのか?
4年後を描いた書き下ろし短編「ハンドベル」を文庫化にあたり収録。

山本幸久さんの作品には、だいたいいつも同じような感想が浮かんでくる。

とにかく圧倒的に読みやすい。
抵抗をほとんど感じず、心地よくただただ読み進めていける。
どんな悩みを抱えていても、憂鬱な気分の時でも、山本作品を開けば、その世界にすんなりと入っていける。

平和だ。平穏な気持ち良さだ。
途上人物がだいたいみんな愛すべき悪気のないキャラクターを備えており、安心してその世界に浸っていられる。

私にとっては、救いの本と言っていい。
無理のないストレス解消の待避所である。
いざというときのために、まだ読んでいない山本幸久作品をいつも手元に確保しておきたいものだ。

読んでるときの印象はいつも同じような感じなのだが、何冊読んでも、飽きることははない。それぞれにちゃんと楽しめる特徴を有しているのである。

今回も30代の独身の息子と娘たちに対して、親や叔母や姪や周りの関係する人たちが、ドタバタと好き勝手に動き回り、画策し、彼ら彼女らを引きずり回しつつき回し、それでもなんだかみんな双方に楽しんでいるようで、微笑ましい。

シングルベルとは、「一緒にいる相手もいなく、一人でクリスマスを迎えること」を意味するのだと思うのだけど、そういう悲壮感とか孤独感とかそんな感じはこの中にはあんまりなくて、それなりにみんな平和でささやかな人間関係を構築しているところがこのお話の良さなのだろうし、過剰なお節介も含めて人とのつながりのあったかさがしっかりと物語を包み込んでいる。

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2012.07.06 | 山本幸久 | トラックバック:(0) | コメント:(3) |

山本幸久さんの「渋谷に里帰り」です。


《文庫裏表紙より》
峰崎稔は、大学卒業後、食品会社に就職、営業マンとしての野心もなく10年が過ぎた。寿退社する先輩から引き継ぐことになったエリアは、子供時代を過ごした渋谷。そこは、親の事業失敗で転居して以来、遠ざけていた場所だ。だが、顧客から信頼される先輩の手腕を目の当たりにするうち、仕事の面白さに気づき始めていく稔。そして、新しい恋が始まる予感も──オシゴト系青春小説!


ああ、読みやすい。
スイスイ、心地よく読めてしまう。
見事なまでにすんなりと文章が、物語が頭に入ってくるし、私に合わせてくれたのかと思うような優しいリズムに漂いながら、主人公を取り巻くいろんな出来事にも適度に興味を惹かれて、ホーバークラフトのような抵抗のない推進力で頁をめくっていく。

主人公は、確かによくいそうな三十代前半の男性だ。
喜怒哀楽を顔に出さず、覇気のない男と思われている。でもそれなりにユーモアもあり、頑張るところは頑張るし、上司との関係も悪くない。
自分にかぶる部分がないでもないが、自分の分身のようには感情移入はできない。

作品の構成もそんなに特別な工夫があるわけではない。
普通と言えば普通のお仕事小説である。
物語の展開も地味と言えば地味かもしれない。
目頭が熱くなることもないし、ハラハラドキドキのスリルも特にない。

それで、面白いのか?と問われれば、なんか面白いのだ。心地よいのだ。
読んでいて楽しいし、活字の中になんの迷いもなく溶け込めるのだ。

これぞ、山本幸久さんの才能だろうか。
あたりまえの日常、あたりまえのお仕事、あたりまえの人間関係。
その中で普通に真摯に前を向いて歩んでいく姿が、とてもとてもキュートでかけがえがないのだと、彼は教えてくれる。

渋谷という都会が舞台となっているから、渋谷なりの楽しさが盛り込まれているのだが、そういう中でも誰にとっても何か懐かしいと感じられるようなまちの断面を垣間見せてくれる。
そういう細かな配慮が行き届いていて、地方に住んでいる私にも共感できるエピソードが積み上げられていくことが、また心地よさを与えてくれるのだ。

おだやかな、安定した気持ちになりたいときに、山本幸久作品は効くのである。

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2012.06.15 | 山本幸久 | トラックバック:(0) | コメント:(2) |

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