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辻村深月さんの「ツナグ」です。

《新潮社HPより》
この喪失は永遠に取り戻せないのか――あなたが再会したい人は誰ですか?
もしOKしてくれたら、絶望的な孤独から私を救ってくれた「あの人」に、ただ一言、お礼が言いたいんです――。たった一人と一度だけ、死者と生者を再会させてくれる人がいるらしい……。大切な人を失った後悔を抱えながら、どう生きればいいのか。誰もが直面する苦悩に真っ正面から挑んだ、著者渾身の連作長篇ミステリ!


紹介文に、「誰もが直面する苦悩に真っ正面から挑んだ」と書かれているように、人間の心の深いところを描こうとした意欲的で奥深い作品だ。

ミステリと書かれていて、「死者と一度だけ会える」という神秘的で不思議な事象を扱ってはいるが、謎とか推理とかそういう部分はあまり(重要では)なくて、人間の深層のところを、人と人との関係の中で感じ合い、誤解し合い、すれ違い、理解し合う微妙な感情を描いている。

さすがに辻村さんの作品だと言えば、そのとおりだと思うのだが、私の読後の印象としては、そんなにグッとは気持ちの中には入ってこなかった。
強い印象は残ったし、お話も面白くはあったが、これまで読んだ辻村さんの作品のようなジンと余韻が残る素晴らしい読後感は少し薄かったように思う。

最初の二話は、テーマはわかるのだが、依頼者の苦悩のところが少し極端な思考のせいか、あくまでも私の考え方のせいか、あまりしっくり来なかった。なにか感情のまどろっこしさみたいなモノが邪魔をしてどうも共感できないでいた。

後半の三話は、展開にメリハリがあってズンズン読み進めていけたが、予想した通りに展開し、いろいろな部分であまりにもお話ができすぎている感じがして、感情移入があまりできなかった。
依頼人や使者の感情の動きとか思いの揺れとかそういうものが、全体に説明しすぎていて、もう少し読者にゆだねて欲しいと感じた。

なんか、低評価な印象を与えるレビューになってしまっているが、大好きな辻村深月さんの作品だからこその感想であって、十分に魅力的な作品だったし、映画化されるそうだが、映画にしたら面白いだろうと期待している。

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2012.06.30 | 辻村深月 | トラックバック:(1) | コメント:(0) |

辻村深月さんの「ぼくのメジャースプーン」です。


《文庫本裏表紙より》
ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった――。
ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に1度だけ。これはぼくの闘いだ。


挑戦してるなぁ、辻村さんは。

十歳の「ぼく」は、特殊な能力を持っている。
ある日、学校で起こった残酷な事件に巻き込まれて、幼なじみの大切な人「ふみちゃん」が心を閉ざしてしまう。犯人は、医学部の学生で、起こした事件やその被害者をエンターテイメントとして消費するような「悪の王様」だ。
「ぼく」は、特殊な能力を使って犯人に罰を与えようと考えるのだが、同じ能力を持つ親戚の「先生」に、能力のことを教わりながら、先生と対話を繰り返して、どうすべきかを考え抜いていくお話だ。

復讐とは何か。これは誰のための復讐なのか。動物を殺し、人の心を深く傷つけた犯人に与える罰として何が相応しいのか。能力を使って罰を与えることは正しいことなのか。動物を殺すことは悪いことなのか。動物の命と人の命はどう違うのか。人は自分のためでなく他人のために泣くことができるのか。

先生との対話を通じて、深い、難しいテーマが次から次に表出する。これほどに道徳的というか、哲学的というか、取り扱いの難しいテーマに、それも十歳の少年を主人公に据えて、真正面から切り込んでいく。先生からの容赦のないストレートな問題提起とそれに答える少年の揺れながらも芯の座った思考という、なかなかの迫力ある厳しいやりとりが印象的だ。

作家として、テーマを掘り下げていくぼくと先生との問答に多くのページを費やして、正攻法にど真ん中から問題に挑んでいく姿勢には恐れ入る。

「ぼく」の出した結論が正しかったかどうか別として、これほどに根源的な問題を取り扱った本作はあまりに力強く、著者の意気込みと力量に感じ入る、身震いするような傑作だった。
そして、最後には、衝撃と感動とともに愛とは何かを考えさせられるのだ。

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2012.05.08 | 辻村深月 | トラックバック:(1) | コメント:(4) |

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