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滝川薫、村上敦、池田憲昭、田代かおる、近江まどかさんによる「欧州のエネルギー自立地域 100%再生可能へ!」です。

本書は、脱原発を決めたドイツ、イタリア、スイス、原発を持たないオーストリア、デンマークにおいて、農村から大都市まで、原発や化石燃料に依存しない再生可能エネルギーによる自立をめざす実践の様子を、欧州に暮らす5人のジャーナリストが取材し、レポートしたものである。

各国のエネルギー政策やその背景なども整理されているが、特に五か国から15か所の村や町、州を選び、再生可能エネルギーの導入に至った経緯や現状などを報告している。

先進地域として紹介されているところは人口数千人の小さな村が多い。農村地帯では、交通も含んだエネルギー消費を100%再生可能エネルギーで生産することは、地域の資源や環境条件として短中期的に実現可能であるとともに、住民の意思統一が比較的容易であり、地域のイニシアティブが働きやすいからであろう。

一方、人口密度が高い都市部では、その難易度が上がる。そのため、都市と周辺地域が集まった広域連携地域で取り組もうという例が増えてきているそうであり、本書では、人口135万人を抱えるミュンヘンのような大都市や州の取組も紹介されている。

再生可能エネルギーの導入に取り組む地域の最大のモチベーションは、これまで化石燃料(電気代、暖房代、ガソリン代など)を購入して地域から流出していたお金を域内で循環させることで、地域経済を活性化することだ。
そして、その担い手は、市民であり、地域の事業者である。
あくまでも地域戦略として、社会全体で取り組んでいるケースを「エネルギー自立地域」と呼んでいる。

欧州では、ここ15年ほどの間、エネルギーの主権を再び地域に取り戻す動きが急速に展開しており、地域分散型のエネルギー供給システムへの回帰が進んでいる。
それは、農家の経営を支えるエネルギービジネスを提供するとともに、地域の人々が共同出資するなど多くの人に利益が分配される仕組みを伴っていく。それによって、地域コミュニティの強化にもつながっている。
そして、地域分散型エネルギー生産は、自ずと雇用も分散させ、施工業者、プランナー、コンサルタント、市民投資コーディネート会社、地域資本の小さなエネルギー会社、エコツアーの業者など、地域の中に新しい職を生み出している。

ドイツ、オーストリア、スイスでは、国や州が地域のエネルギー自立をサポートする様々なプログラムを進行中である。分散型再生可能エネルギーの時代には、地域住民の賛同と参加が欠かせない。そこで、自治体や郡は調整役を務める重要な存在である。

再生可能エネルギーを推進するインセンティブには、各種の政策、法的な枠組みが必要である。固定価格買取制度(FIT)やCO2税(環境税)、助成金、設備の建設許可の簡易化などである。固定価格買取制度は、日本でもようやく制度が確立し、2012年夏から運用がはじまろうとしている。

なかでも都市計画制度などとの調整が日本でも重要に思える。
例えば都市計画マスタープラン(土地利用計画)の中に、風況とともに自然や景観、住民への影響を考慮した風力発電の設置可能な場所の記載すること/農地との調整の中でメガソーラー等の設置場所に関する記載/太陽光発電と歴史的建造物の保全規制との調整/生態系や景観、漁業権・水利権との調整を可能とする小水力発電に利用可能な区域を定義した水系地図の作成などである。

これから地域のエネルギー自立に取り組むにあたっては、その道しるべとしての「エネルギーコンセプト」づくりが、まず重要になる。自治体がエネルギー自立政策を実現していく上で基盤となる構想、行動計画である。

内容は、「現状の分析(エネルギー消費の現状とポテンシャル調査)」→「政策目標(目標設定とシナリオ)」→「戦略(対策リスト、実施体制と評価方法の作成)」などを定める。
また、これらを支える情報としてエネルギーのビジュアル化(GIS等)が望まれる。

これらは、地域の様々なステークホルダーが集まって共同で未来図を描き、地域のコンセンサスを得ていくプロセスが大切である。

そして、非常に重要なのは、市民の参加や小さな投資を広げていくための様々な手法を地域にあった形でデザインしていくことだ。再生可能エネルギーの市民投資をコーディネートしていく必要がある。

小規模分散型の再生可能エネルギーは、小さな投資家を好む。小さな市民投資家が安心してエネルギー生産事業に参加できることがきわめて重要なのである。

本書は、エネルギー生産が分散することにより、経済活動も富も分散し、地域が豊かになると言う。再生可能エネルギーが地域社会の再生や発展にとって重要な「道具」として大きな意味を持ちはじめていると訴える。
一極集中の産業構造から分散型の構造への移行であり、社会構造の大きな変化を必要とする。その長いプロセスを踏み出そうと唱えている。

今、日本でも、再生可能エネルギーへの転換の動きが加速しつつある。しかし、メガソーラーをはじめ、再生可能エネルギー事業を推進しようとしている事業体の大半が大企業ではないだろうか。
しかし、本書で紹介されている欧州の事例では、大企業は登場していない。あくまでも、地域の住民と自治体、地域企業が主役である。本書は、日本の進むべき方向を示唆しているように思うのだが、果たして日本において、住民自らが立ちあがり事業を主体的に立ち上げていくような機運が起こってくるのだろうか。

日本においても、今、福島原発の事故をきっかけとして高い問題意識が芽生えてきていると思うが、そうした意識を具体的な事業への参加に向かわせる啓蒙とか、地域の意思形成とか、教育とか、安心して参加できる枠組みづくりとかいった取り組みや事業を推進し、コーディネートしていくことが必要なのではないかと思う。その役割は、自治体だけではなく、地域にそうした専門機関を育てていくことが必要なのではないだろうか。

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2012.06.06 | 地域づくり | トラックバック:(1) | コメント:(5) |

飯田哲也さんの「エネルギー進化論」―「第4の革命」が日本を変える― です。

地域の先進的な自然エネルギー推進の取り組みをサポートしてきた飯田哲也さんによるエネルギー政策を地域から再考するための指南書だ。

結論的なところから言えば、従来の中央集権構造を解体し、地域の中で、地域の住民自身がエネルギーをつくっていくような流れを生み出す(中央管理型から地域分散型への)パラダイムシフトという文明的な挑戦を試みるエネルギーシフト構想をめざそうと提案している。

それは、情報がインターネットという分散型の仕組みとして始まったように、あるいは、マネーの世界でもリーマンショックを契機として、投機的なお金の使い方から、目に見える形で地域内で循環させる方向性へと志向されているように、エネルギーも大転換の地点にあり、それは地域から変革の波が起こるということだ。

本書では、まず、自然エネルギー懐疑論への反論からスタートする。
化石燃料などのコストが変動し、高騰するなかで、「自然エネルギーは、唯一、コストの下がるエネルギーである」こと、「コストを長期固定できる」こと「「自然エネルギーは変動するベース電源である」こと、「持続可能なエネルギーである」こと、などを解説している。

そして、自然エネルギーの爆発的な躍進は、農業革命、産業革命、情報革命に次ぐ「第4の革命」と呼ぶことができるとし、世界における自然エネルギーの歴史を振り返りながら、その牽引役を果たした、アメリカのカリフォルニア州の電力買取制度を活用した風力発電の爆発的な普及やソーラーパイオニアというプログラム、デンマークの風力発電を送電線につなぐ系統連係の実現、風力発電協同組合の発足、三者合意による固定価格買取制度の実現、それに続く1990年代のヨーロッパにおける環境エネルギー革命(ドイツ固定価格買取制度(FIT)、北欧諸国のバイオマス導入政策)などについて解説されている。

一方、日本ではなぜ自然エネルギー活用が進まなかったのか?
著者は、2000年前後からはじまる日本の自然エネルギー暗黒時代を「失われた10年」と呼んでいる。
世界の自然エネルギー政策の動きに対し、全くの無視を続けた通産省をはじめとする官僚機構、失われた10年を作った「新エネルギー特別“阻止”法(措置法)」、日本の電力10社による地域独占体制(地域独占、垂直統合)、巨大企業である電力会社が地域経済団体を通じて地域政治に及ばす大きな影響などが、日本の自然エネルギーの普及を徹底的に遅らせたとする。

こうした中で、地域からはじまったエネルギー革命の動きを紹介している。
海外での先駆者であるカリフォルニア州やデンマークでの自然エネルギーの始点が、中央から離れた「ローカル」にあったこと。
様々な合意・決定手続きのシンプルさと「ゆるさ」により、こうした革命、変化は、周縁、すなわち地域から始まるのだ。

海外では、スウェーデンの人口7万人の都市ベクショーというコミューンがバイオマスエネルギーによる地域暖房を拡大する中心的役割を果たした。ドイツの人口25万の地方都市アーヘンでは、太陽光発電で作った電力を電気料金の13~15倍の値段で購入する制度をつくり、絶大なる効果を発揮する。また、スペインのバルセロナでは、新築・増改築の建物への太陽熱温水器の設置義務」という条例を実施し、国の法律にまで発展し、類似した法律は、ヨーロッパ各国に広がる。

日本では「失われた10年」の中で、東京都が常に国に先んじ、圧倒的な機動力で日本の再生可能エネルギー戦略を牽引してきた。
その他、著者が関わってきた「北海道グリーンファンド」「飯田市の市民出資の発電所」「祝島“自然エネルギー100%”プロジェクト」などが紹介されている。これらは、市民出資や寄付による仕組みを作りあげて事業を成立させていること、地域から新しい制度を提案しているところにポイントがある。

最後に、これからの日本のエネルギーシフトのシナリオを提案している。2020年には、原発を「0」にし、自然エネルギーを30%、省エネ節電20%、化石燃料で50%にする。2050年には、化石燃料も「0」にし、省エネ節電をさらに進め、電力は自然エネルギーですべてまかなうというものだ。
ポイントは、エネルギー効率を改善することにある。熱を逃がさない工夫などにより、我慢するのではない、社会全体で「電力を減らす豊かさ」を実現していくことだ。

そして、地域は、自然エネルギーを一つの生産物として、産業として育てていく。
外国から買った化石燃料でなく、地域の中でお金を回していきながら地域がそれぞれ電力をつくり、地域間で融通し合うネットワークをつくり、開かれた地域自立の自然エネルギーのかたちを創ることが重要だとしている。

こうした、地域主導、分散型の方法へと、エネルギー政策を変えていくことが、環境の視点からも、地域経済の視点からも、安心できる暮らしの視点からも重要なのだと思う。
地域から動くことこそ大切だ。
市民一人ひとりが参画すること。そして地域の企業や金融機関、自治体などがパートナーとなり、地域のソーシャルキャピタルを強めながら、取り組むべき重要課題だ。
私たちも、その中でしっかりとした役割を見つけて動いていきたいと思う。

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2012.04.21 | 地域づくり | トラックバック:(0) | コメント:(0) |

神奈川県知事である黒岩祐治さんの「地産地消のエネルギー革命」です。

元キャスターであり、ジャーナリストの黒岩さんは、2011年4月の知事選挙で「神奈川県からエネルギー革命を興す」ことを旗印に、「脱原発」を訴え、「太陽光発電/四年間で200万戸分のソーラーパネルを!/夏の需要に間に合わせ5万~15万戸分を!」との一点突破型のマニュフェストを唱えて知事選に当選した。

知事となった彼の口癖は、「圧倒的なスピード感」となり、さらに「想像を絶する圧倒的なスピード感」へとバージョンアップしていく。

本書は、大きく3つの内容で構成されている。

はじめに、神奈川県知事として進める「エネルギー革命」の中身を語っている。

脱原発」と「太陽光発電」を掲げて当選した選挙時の思いから、知事となって、早速、夏の冷暖房需要に間に合わすための「太陽光発電」の補正予算を組み、「かながわソーラープロジェクト」を稼働させ、実現する手段として「神奈川ソーラーバンク構想」を訴え、「神奈川スマートエネルギー構想」へと展開していく政策を解説している。
確かにスピード感が際だっている。

神奈川県約400万世帯の半分にあたる200万戸に普及するという目標値を掲げて、自己負担なしでもつけられるようにと「ソーラーバンク構想」を立案する。
この素早い動きに反応したのがソフトバンクの孫正義氏である。
すぐに「黒岩祐治を男にするために全力でサポートしたい」と動き出す。メガソーラー推進のための知事連合の提案をするのだ。
神奈川県を含む四県への孫氏によるプレゼンではじまった知事連合の自然エネルギー協議会は、35府県の連合になり、2011年7月には「秋田宣言」をまとめるにいたる。

その後、8月には再生可能エネルギー特別措置法」が成立し、再生エネルギーの普及を支える制度的な裏付けが徐々に整いはじめた。
太陽光発電からスタートした政策は、「創エネ・省エネ・蓄エネ」の政策パッケージによる地産地消のエネルギー政策「かながわスマートエネルギー構想」へと展開されていく。エネルギーで革命が起きる。しかもそれは、生活や産業に関連するまちづくりにつながるとの考えを政策として構築するものだ。

さて、本書の中盤は、エネルギー政策の動向と様々なタイプの再生エネルギーの最前線と可能性、蓄電やスマートグリッドなどの省エネ・蓄エネの技術革新と政策の動きについてまとめている。

さすがに元ジャーナリストだけあって、要領よくまとめられている。
内容的には、他の再生エネルギー関連の著作と共通するものであって目新しくはないが、太陽光発電とともに、省エネ・蓄エネの分野では、要所で神奈川県として実際に進めている政策が盛り込まれているので、説得力はある。

例えば、電気自動車(EV)の蓄電池を家庭用に再利用する「蓄電プロジェクト推進事業」や、EVユーザーと充電インフラ事業者を県が仲介者となってつなぐ「EVサポートクラブ」の設立、エネルギーの供給側から需要側までの総合的な社会システムの中にスマートグリッドやEVなどの最先端技術を投入して新しい都市マネジメントの形を横浜市と民間五社が実際の市民生活の中で実証していく「横浜スマートシティプロジェクト」、パナソニックが藤沢市と展開する「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン構想」などである。

本書の最後には、地産地消のエネルギー革命によって、今後、都市が、社会がどのように変わっていくのかを予測し、県知事としての意気込みを語っている。

特に、コンパクトシティの推進により、都市への人口集積が他国(特にアジアなど)とは違う形で進む一方で、インフラの更新需要が起こるこれからの日本において、エネルギーがボトルネックとなることを指摘し、それを解決するのがスマートシティであるとする。
それは、エネルギーからはじめて、行政、交通、教育、医療、水道などのサービスに波及させ、効率化していくもので、民間資本の導入を誘引する魅力ある都市づくりが重要であるとしている。

さらに、21世紀の産業は、社会問題を解決するソリューション型の産業が発展するとし、「環境エネルギー産業」と「ライフイノベーション産業(医療、介護、健康など)」という二つの産業クラスターを形成したいとしている。
めざすのは、「住めば住むほど環境がよくなり、健康になる街づくり」だとする。そのハードウエア、インフラストラクチャーこそがスマートシティ構想であるのだ。

国内では太陽光発電が大きくニュースになり、動きが活発だが、量産化によるコストダウンへの期待と買取価格とのバランスがまさに今調整されているところである。
ただ、地域における最適な形は、地域やライフスタイルによって違ってくるということを理解しないといけない。地域の状況を踏まえてきめ細かに開発し、活用を図っていくことになり、そこに地域の自治体がエネルギー政策を積極的に展開していく意味がある。

地域で地域のエネルギー事情に即応した再生可能エネルギーを総合的に構築する、そんな地産地消のエネルギーが、新たな雇用を発生させるような仕組みを構築したいものである。それは地域の事情を熟知した地域の企業、住民、自治体が中心となる事業のはずであり、本題である「地産地消のエネルギー革命」の成果がそこにあると思う。

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2012.04.16 | 地域づくり | トラックバック:(1) | コメント:(0) |

山田まさるさんの「統合知」―“ややこしい問題”を解決するためのコミュニケーション です。

山田まさるさんは、マーケティング・プランニング会社のCOO(副代表)で、PR会社の代表とつとめ、「脱広告・超PR」などの著作を書かれている。

少子高齢化で国内市場が縮小するなかで、企業は従来のように「競合相手に競り勝つこと」を追求するマーケティングでは、課題解決をすることが難しくなってきた。また、東日本大震災から1年たち、未曽有の出来事の影響からも、社会的問題への関心が高まりを見せている。
こうした状況の中で、従来のやり方では解決できない「社会問題×マーケティング」というような『ややこしい問題』(解決の筋道が分かりづらい、複雑多様な問題)がたくさん出てきている。
この『ややこしい問題』を解決するためのコミュニケーションを考えようというのが本書である。

『ややこしい問題』には、そう簡単に結論を出せるものではない。問題の本質から見直して解決の道筋を少しずつ明らかにしていく必要があり、そのキードライバーが「統合知」(人の英知を結集させること)だというのだ。

著者の言う「統合知」による問題解決の方法を私なりに要約するとこんな感じだと思う。

基本の流れは、
「①課題発見」→「②統合知の編集」→「③統合型コミュニケーションの実践」
である。

そして、まず大切なのは、問題の本質を見極めることだ。
そのために、「2C+S発想」で、「自社C」と「顧客C」と「社会S」の心理行動を明らかにする。そしてもう一つ重要なのはコミュニケーションの「構え」をつくることだという。それも起点は、自分の「行動」からしっかりと「構え」をつくれという。企業で言えば、自社の本質的価値(理念や事業の根底)に根ざした大きな構えを持て(スタンスを定めろ)ということだろう。
すなわち、自社のスタンスを見失わず、社会課題の解決をめざした本質的価値の追求とへとシフト・チェンジする発想が大事なのである。

構えが整ったら、次は人知を集めた上、課題解決に取り組む。統合知の編集である。
その際、まずはターゲットに自分と関係ある問題だと受け止めてもらえる(自分事化)ような身近な議題を設定して「小さな参加」を引き出すことから取り組むのがポイントだ。

そして専門家やステークホルダーの人知を集め、最後は生きた人間と人間の関係づくりによってつくりあげた「統合知」こそが、難題を解決するにあたって、大きな力を発揮する。

人知が集まったら、ソーシャル・コミュニケーションとマス・コミュニケーションの2つの渦から、統合型のコミュニケーション戦略でダイナミックなうねりを起こすのだ、

筆者は、これらをソーシャル・コミュニケーション・デザインなる概念として提案している。


この他、「コミュニケーション・リーダーシップ」や「3年ゴール」の設定、「場・会・座」によるオープン・フラットな関係づくり、コミュニケーションの「自律」「自走」(継続するための事業の中での組織化)などの実践手法に言及している。

提示されていたフレームワークは、上記のように受け止めたが、正直に言って抽象的な表現と丁寧すぎる説明が少し諄く、わかりやすいとは言い難かった。この部分は、もう少し思い切って簡潔にしてしまった方が読者には伝わるように感じた。

ただ、本書には多くの事例が紹介されている。
難病である魚鱗癬(ぎょりんせん)の啓発活動や大震災後の福島県産農産物の風評被害対策、同じく震災に絡んだ「ガリバー×タッグプロジェクト」「ダイキン節電プロジェクト」「味の素の節電レシピ」など、どれも重要ではあるが本当に「ややこしい」難題に対峙しなければならず、困難を承知で引き受ける心意気にまず頭が下がる。
活動の経緯を辿るに、筆者の社会問題に対する真摯な姿勢や熱い思いがしっかりと伝わってきて、何も動けないでいる自分への自省の念を深く感じながら共感するものがあった。確かに筆者は、最後に述べているように「構え」が揺らがないのだなと感心させられた。

この本の魅力は、この事例の方にあるのかもしれないというのが読後の感想である。

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2012.03.25 | 地域づくり | トラックバック:(0) | コメント:(0) |

筧祐介さんの「地域を変えるデザイン」です。

本書は、ソーシャル領域におけるデザイン思考を定義しながら、今地域を取り巻くキーイシュー(社会課題)をデータとともに示し、それらの地域の社会課題を“共感の力で美しく解決する”実践例を紹介するもの。


デザイン思考」とは、アップルのPCのデザイン等で有名なアメリカのデザインコンサルティング会社IDEOが唱え始めた方法で、デザイナーの仕事術から核となる部分を抽出し、商品開発から流通に至る過程やひいては企業経営全体のデザインなどに適用しようというものだ。

デザイン思考は、これまではプロダクトデザインの分野、すなわち「モノのデザイン」で使われることが多かったが、本書では、成長から成熟へと日本が変わってきた今、地域ならではの仕組みなど「コトのデザイン」にこそ有効であるとする。複雑化する社会問題に直面する地域において、問題の本質を五感を使って直感的、身体的に捉え、美と共感の力で人の心に訴え、行動を喚起し、社会に幸せなムーブメントを起こす行為が「デザイン」であり、今の時代の地域に求められているとする。

めざすのは、「地域を歩き、話を聞き、課題の本質を心で感じ、身体で理解する。仲間と共にわいわい議論し、わくわくするアイデアを生み出す。アイデアはすぐカタチにしてみる。そんな創造的で賑やかなプロセスを楽しみながら実践する人を増やして地域を変えよう」というのである。なかなかに魅力的な考え方であり、これからの地域づくりのあり方をわかりやすく提案している。

この他、地域を変えるデザインの主体となるものとして、デザイン思考を持ったコミュニティ=デザインコミュニティの役割と生み出し方について、これからの時代の行政のあり方として、デザイン思考で問題解決能力を高める行政=デザイン行政の役割や行政職員の心構えについて触れている。

この本の中で紹介されている「八戸のうわさ」を手がけられたアーチストの山本耕一郎さんに来ていただいて、地域デザイン講座というものを開催させてもらった。アートが子どもから高齢者まで本当に多くの人たちの気持ちを喚起し、つながりをつくり、みんなが一体となって動いていく姿に感激した。人と地域、人を人をつないでいくことの醍醐味みたいなものが伝わってきて、その大きな波を創り出す姿の素晴らしさ、地域にかかわることの面白さをあらためて感じさせてもらった。

地域デザイン、コミュニティデザインという領域は、私自身も今、最も興味を抱いている分野であり、最も意識して心がけている考え方であり、日ごろの活動の中で実践すべき地域社会へのアプローチ方法だと認識している。
こうした取り組みの流れが大きくなっていくことを願っているし、地域の構成員として微力ながらもかかわっていきたいものだ。

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2012.03.17 | 地域づくり | トラックバック:(0) | コメント:(0) |

田口理穂さん他 「『お手本の国』のウソ」です。


日本において政策の先進事例として取り上げることの多いいくつかの国とテーマに関して、日本で抱いている「憧れ」とは少しばかり違っている実態を、日本を離れてその国に長年暮らすライターの方々がレポートしたもの。

内容は、題名や帯の印象ほどには明確に「ウソ」を指摘する本という訳ではない。でも、実際に日本を離れてその国で暮らすライターの方々の「生の感覚」を知ることは興味深いし、日本からよく見ずに憧れたり、すでに出来上がった見方を通して見てしまう「お手本の国」が、それぞれ複雑な問題を抱えていることを知るのは有意義だった。

フランス少子化対策、教育大国フィンランドのお話は、ライターの実体験・実生活に基づいていてなかなか面白く、また自然保護大国ニュージーランドとドイツの戦争責任への取り組みでは、その多大なる苦労の歴史と筋の通った姿勢が印象に残った。

興味深かったのは、「合計特殊出生率」がこの数年2.00あたりを前後しているフランス。「少子化を乗り越えた国」フランスには、実は「少子化対策」という特別な言葉がないそうだ。少子化に慌てて対策を導入したわけではなく、ずっと以前から「家族政策」に取り組んできた歴史があり、70年代に低所得層へのセーフティネット、80年代に女性労働支援策を講じてきた。こうした積み上げが高い出生率を実現させているのだろうとのことだ。

フランスの特徴として新生児が婚外子であることが多い点があげられる。これは、10年ほど前から結婚よりも法的拘束力が幾分弱く、一方の意志で解消できるPACS(社会民事連帯)という、二人の結びつきを認知する法的枠組みができたことが大きい。PACSは、もともとは同性愛のカップルに結婚を認めない変わりに与えることにした制度だが、これを実際は異性愛カップルが使っている。フランスでは一緒に暮らしはじめた二人の仲が少し安定したものになるとPACSを結び、子どもができてそろそろ別れそうもない確信ができると結婚するというパターンができているとのことだ。このあたりの仕組みは大変興味深い。

その他、若いカップルの同居率(同棲率)の高さと同居開始の低年齢化、そういう若い人を支える高等教育機関の授業料がかからないことや学生・低所得層に対する住宅賃貸援助、医療保険には全ての人が入る(収入がない場合は保険料は無料)ことなど、若いカップルを成立させるよう後押ししている状況は、日本とはずいぶんと違うように感じた。
また、離婚の場合の親権のあり方の違い、日本で言われる家族崩壊どころか「家族」がますます大切なものになっている状況など、興味深いフランスの事情が紹介されている。

フィンランドの教育に関するレポートも面白かった。国をあげて教育投資をしている姿は、「ウソ」ではなくてイメージ通りである。義務教育では学費はもちろん、文房具に至るまでほとんどのものが支給されるなど、徹底している。

ただ、日本との最も大きな違いを感じたのは、現場の先生の裁量であり、先生の社会的な地位である。
フィンランド教育改革の要はまさにこれであったそうで、1994年からトップダウンの統一指導要領が廃止され、自治体に大幅な権限を委譲、細かなカリキュラムは先生の裁量に任されるようになったとのことだ。時間割も選択科目や合同授業の時間だけが指定されていて、担任の先生が生徒の様子を見ながら、当日にその都度教科を指示する。教科をいつ習い始めるかも担任が決めているそうだ。

そして、教職はクリエイティブな職種と見なされていて、大学でも競争率の高い人気学部であり、特に小学校の先生になるには修士号が必須とされている。先生の社会的地位が高いことこそ、フィンランドの教育の最大の特徴であろうと思った。

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2012.03.16 | 地域づくり | トラックバック:(0) | コメント:(2) |

紺野登さんの「幸せな小国オランダの智慧」―災害に負けないイノベーション社会


日本が、失われた20年で最も大きな変化を被ったのは、社会的な資本であり、社会の知的弾力性を個のレベルから回復することが必要だとする。オランダには水と戦ってきた歴史があり、干拓地を単位とするコミュニティ「ポルダー」には、住民の自発的協働による地域連携の文化的伝統がある。そうした自由闊達な対話を認め、問題解決に向けて協力し合う豊かなソーシャルキャピタルを背景にして、「不確実性に強い知的弾力性」を育むオランダに今の日本は学ぶことが多いという。

オランダは、知識経済社会への変換を成し遂げているとする。たとえば、1時間あたりのGDPが世界で最も高い。これは、情報技術の活用、ワークシェアリング、ネットワーク化が進んだ社会構造などが要因であると考えられる。オランダの「人間的資本主義」は、社会・文化の知の蓄積(ソーシャルキャピタル)があって、経済原理や技術だけに拠らない人間的な価値、社会的な価値を重視している。これまでの市場主義的資本主義の限界を超える要素として再認識されている。

さて、ソーシャルキャピタルの豊かさとは、様々な知識に(多様性)容易にアクセスできる(近接性)ことである。日本では、こうしたソーシャルキャピタルが危機的な状況にあるといえる。その再生に向けてできることとして本書では、「対話の場づくり」「社会教育」「ダイバーシティの受容」をあげている。

「対話の場」の具体的な方法は、知の交流を促進する新しい「場」のサービスとして、オランダや北欧諸国の政府(各省庁)が設置しているフューチャーセンターが紹介されている。
これは、未来に関わる政策や戦略を目的に据え、関係する多様な人材が集まり楽しく未来を語り解決手段やアイデアを発見・共有して相互協力の下で実践するための場であり、大変に興味深い。
日本では企業がそのリード役となって設置がはじまっているようだし、これを日本各地につくろうという具体的な動きも展開をされている。

「社会教育」についてポイントと感じたのは、ひとつは社会やコミュニティのレベルで役立つことは何かを教えることの重要性であり、社会とのかかわりを学ぶ教育である。そしてコミュニティを起点に社会と技術や知識を結びつけるようなイノベーションへのアプローチでが求められる。

もうひとつ、オランダのイノベーションに欠かせない観点は「デザイン」である。
ダッチデザインの特徴は、「技術と社会をつなぐデザイン」であり、あるいは社会的関係性を生み出すための活動である。いわゆるモノのデザインでなく、コトのデザインであり、その活動の中に適切にモノや技術・知識を埋め込んでいくのである。

正直、本書はオランダの歴史的な話が多く(それはそれで興味深いのだが)、フューチャーセンターを含めたこれからの話をもっと聞きたいと感じた。まあ、それは自分たちで調べ、考えて行動しろと言うことかもしれない。私たちの地域においても、フューチャーセンターのような前向きで効果的な未来志向の「場」づくりをめざしたいものである。

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2012.03.14 | 地域づくり | トラックバック:(0) | コメント:(0) |

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